包括利益とは、純資産の増分のすべてを含む利益である。すべてを包括的に含むので、包括利益という。
利益の計算方法には、収益・費用アプローチと資産・負債アプローチの2つがある。両者は利益の捉え方が動的か静的かの違いだけなので、原理的には両者は一致するはずだ。ところが、当期純利益で終わる従来の損益計算書の場合、損益計算書の最終利益と純資産の増分は一致しない。
それを理解するためには、当期純利益の意味を理解する必要がある。
多くの人は当期純利益が増えると喜ぶが、当期純利益は最終的には会社からキャッシュを流出させる原因となる。なぜならば、当期純利益とは配当の原資だからだ。したがって、当期純利益は、それに相当するキャッシュがほぼ確実に流入することが見込まれなければならない。キャッシュの流入の確実性が高い利益を「実現性の高い利益」という。
逆に言えば、キャッシュの流入が不確実なものは、それが純資産を増加させるものであっても当期純利益には含めたくないのだ。
かくして、当期純利益と純資産の増分に不整合が生じるのである。 この不整合分もすべて含めた利益が包括利益だ。包括利益は資産・負債アプローチに基づく利益概念であり、資本取引以外の純資産の増分をすべて含む利益となっている。