IFRS

IFRSとはInternational Financial Reporting Standardのことである。日本語では国際財務報告基準という。一般的には国際会計基準と言われることが多く、本事典でも慣例にならってそのように言っているが、本来、「国際会計基準」はInternational Accounting Standard (IAS)だ。歴史的にも、国際会計基準が発展的解消を遂げてIFRSになっているので、国際会計基準という言い方は本来は正確ではない。

IFRSの目指すところは国際的に会計基準を統一することだ。EU、カナダ、オーストラリアに加え、中国、韓国、インド、アセアン諸国と既に相当数の国が採用している。

日本では強制はされていない、2010年3月期から任意適用が認められている。2013年にその適用要件が緩和されてから、IFRSを適用する会社は着実に増えており、2020年3月時点でIFRSを採用する上場企業は200社を超えている(詳しくはこちら)。これは、上場企業全体の5.4%程度に過ぎないが、時価総額比率では3割を超えている。規模の大きい企業が積極的に採用していることが伺える。

金融庁は「修正国際基準」(Japan’s Modified International Standards: JMIS)という、いわば“日本版IFRS”を作り、2016年3月期から採用が可能になっている。これは、IFRSの中で日本の当局が気に入らない部分を独自に修正したものだ。言うまでもなく、“国際基準”とは認められておらず、2020年3月時点で採用している企業もない。おそらく誰にも使われることなく消滅する可能性が高い。

いずれにしても、日本は連結財務諸表について、日本基準、米国基準、IFRS、修正国際基準という4つの会計基準から好きなものを選んでいいという、世にも珍しい国になっている。

幸か不幸か会計基準に4つも選択肢があるので、会計基準の選択は重要な経営テーマの一つになっている。

IFRSの意義は少なくとも3つある。第一の意義は、投資家にとっての比較可能性向上だ。資本市場のボーダレス化が進む今日において、国籍によらずすべての企業を同じ土俵の上で評価できるようにしようとするのは当然の流れである。

2つ目は、企業自身にとっての共通言語という意義だ。会計基準が揃っていなければ、海外企業を含めたグループマネジメントはやりにくい。また、国際的な業務提携においても支障が出る。

3つ目は、経理業務効率化の手段としての意義だ。今までのところ、決算業務まで踏み込んで経理業務を海外にアウトソーシングしたり、国際的にシェアード・サービス化したりした日本企業の事例はほとんど見られない。その大きな理由の1つは、海外に日本の会計基準を理解できる人が皆無に等しいからだ。IFRSであればその障壁がなくなる。

第2、第3の意義は、上場企業か否かには関係ない。海外ビジネスを全く考えていないなら別だが、そうでないならば、上場・非上場を問わずIFRSの読み・書きができることはもはや必須要件になりつつある。“読み・書き”とは、IFRSの財務諸表が読め、必要に応じてIFRSベースの財務諸表に書き換えられるということだ。