有価証券は、通説とされている定義と会計上の定義が異なる。
通説とされている定義によれば、有価証券とは「権利を表章する証券であって、それによって表章される権利の発生、移転または行使に証券を要するものをいう」とされている。
何やら堅苦しい言い回しであるが、ポイントは、「権利を表彰(表す)」という点と、「その権利行使に証券を要する」という2つの点にある
具体例で考えてみよう。以下のうち、有価証券に該当するのはどれだろうか。
- 小切手
- 手形
- 株券
- 社債券
- 図書券
- デパートの商品券
- 鉄道の乗車券
- コンサートのチケット
- 郵便切手
- 紙幣
正解は1~8までが有価証券である。
身近な例として、7. の鉄道の乗車券を考えてみよう。鉄道の乗車券は、所定の鉄道に乗車する権利を表している。そして、鉄道に乗車するという権利を行使するためには、駅員さんにその乗車券を提示する必要がある。逆に、乗車券を購入した事実があっても、それを提示できなければ乗車するという権利は行使できない。
8. のコンサートのチケットも同様である。コンサートのチケットは、所定のコンサートを観る権利を表している。そして、コンサート会場に入る際は、そのチケットを提示する必要がある。これもチケットを購入した事実があっても会場で提示できなければ、コンサートを観る権利は行使できない。
いずれも、有価証券の定義における2つのポイントを満たしている。この例から分かるように、通説に基づく有価証券は意外と範囲が広い。
一方、9. 郵便切手と10. 紙幣が有価証券に該当しないのは、それらが何らかの権利を表章するものではなく、それ自体に価値のある金券だからである。 「有価証券」という文字からは「価値を有する証券」と考えたくなるが、それ自体に価値があるものは有価証券ではないのである。