棚卸資産回転期間は、棚卸資産の滞留期間を表す指標である。
棚卸資産回転期間の定義式は以下の通りである。
\[
\mathrm{棚卸資産回転期間} = \dfrac{\mathrm{棚卸資産}}{\mathrm{月平均売上原価}} \mathrm{(月)}
\]
分子の棚卸資産は期末における棚卸資産の残高だ。分母の月平均売上原価には、通常年間売上原価の12分の1を用いる。
月平均売上原価とは、原価ベースでの月平均出荷量である。それによって分子の棚卸資産期末残高を割っているので、この式は「期末に残っている棚卸資産が月平均出荷量の何ヵ月分に相当するか」という意味になる。そのため、棚卸資産回転期間の単位は「月」なのである。
棚卸資産の残高の金額を見ただけでは、それが多いのか少ないのかは分からない。また、取引量が増えれば棚卸資産も必然的に増えるので、多いからどうだということも一概には言えない。
しかし、それを「月」という単位に翻訳すれば、多いか少ないかが直感的に分かるようになる。
また、「月」に翻訳された棚卸資産回転期間は企業ごとにほぼ一定の数値となることが多い。なぜならば、棚卸資産回転期間はその企業の在庫管理レベルに大きく依存するからだ。たとえば、高度な在庫管理システムや物流システムを駆使する企業は一般的に在庫量が少ない。このような企業の棚卸資産回転期間は短い。逆に、在庫管理レベルの低い企業の棚卸資産回転期間は一般的に長い。このような在庫管理の仕組みやレベルはそうそう変わるものではないので、それに依存する棚卸資産回転期間は一定となるのである。
棚卸資産回転期間は、期末における棚卸資産の滞留期間なので、その期間が経過すればその棚卸資産は出荷されることを意味する。したがって、棚卸資産回転期間は、期末棚卸資産が販売されるまでのタイムラグという意味にもなる。
棚卸資産回転期間が短い方が出荷までのスピードが早く、現金化に近付くことを意味するので、安全性の観点からは棚卸資産回転期間は短い方がよい。
なお、分母に売上高を用いる棚卸資産回転期間もある。