2006年5月施行の会社法から新しく設立可能になった会社が合同会社である。合同会社は、所有と経営の一致を前提にしながら、全出資者が有限責任である点に特徴がある。さらに、株式会社と比べると、定款に定めることを前提とした自由裁量(定款自治)の余地が大きいという特徴もある。
所有と経営が一致している会社を作りたいというニーズは昔も今もあるが、そのような会社として法が用意した形態は合名会社か合資会社しかなかった。しかし、そのような会社形態では無限責任の社員が必ず必要となる。
そこで、法は自分達の好きなように会社を経営しつつ有限責任でいいとする合同会社を創設したのである。
合同会社は欧米のLLC (Limited Liability Company, Liabilityは「負債」の意)をお手本にしたので、「日本版LLC」などと言われることもある。
合同会社は、いわば「いいとこ取り」の会社だが、上場はできない。法が想定していたのは、研究開発型ベンチャーやコンサルティング会社など、少数精鋭型の企業であった。しかし現在は、上場を予定していない大企業も合同会社を選ぶ(ないしは、事後的に合同会社に変更する)ケースが増えている。
その典型例は外資系企業の日本法人だ。それらは本国親会社の100%子会社であることが多いので、上場する予定がない。日本企業は体裁を気にして株式会社にしたがる企業が依然として多いが、名より実を取る外資系企業にとっては、合同会社という選択は合理的判断の必然的な帰結なのだろう。
一例を挙げると、西友(ウォルマートの子会社)、ユニバーサルミュージック、P&Gマックスファクター、シスコ・システムズ、ジレット、日本ケロッグなど、有名な大企業がずらりと並ぶ。アップルジャパンもアマゾンジャパンも合同会社である。
起業しようとしていた学生が、Googleの日本法人から内定をもらっていた学生に相談したところ、「会社を作るなら合同会社じゃなくて株式会社にした方がいいと思うよ。合同会社は社会的信用という面でイマイチだから」と言われたという。実はGoogleの日本法人も合同会社である。笑い話のような実話である。