あなたが1人で起業した会社が銀行から1億円を借りたとしよう。オーナーである以上、この1億円の返済義務はすべてあなたが負うというのが普通の感覚だろう。
このように、オーナー、すなわち社員が会社債務の全額に対して責任を負うことを「無限責任」という。
それに対して、会社債務に対して、社員はその出資額までしか責任を負わないのを「有限責任」という。
たとえば、冒頭の例であなたが会社に対して10万円出資していたとすると、1億円の借金を抱えたまま倒産したとしても、社員は10万円までしか責任を負わないということである。もっと具体的に言えば、出資額の10万円が戻ってこないということを諦めさえすれば、それ以上の責任は何ら問われないということである。これは有限責任と言いつつ、実態は無責任にほぼ等しい。
そんな無責任な会社があり得るのかと思うかもしれないが、最も一般的な会社形態である株式会社の社員(=株主)は有限責任である。そうすることによって、一般株主が安心して出資できるようにしているのである。
それにも関わらず、借金を返せない中小企業のオーナー社長が私財を失うのは、銀行が中小企業のオーナー社長に個人的な債務保証をさせることが多いからである。債務保証をしている場合はそれが優先されるが、そのような個別契約がなければ、会社の借金の弁済義務が個人に及ぶことはない。