金額を書くときに3桁ずつカンマで区切ることは、会計の世界に身を置く者にとっては常識であるが、一般の人にとっては必ずしも常識ではないようだ。「3桁ごとにカンマで区切ったからといって、何が読みやすくなるの?」と思っている方もいるだろう。実はこの言い分、ごもっともなのである。日本人にとっては3桁で区切られても読みやすくなるわけではないのだ。
アメリカ人にとっては3桁で区切ることには大きな意味がある。なぜならば、アメリカでは何事も3桁ごとに単位が変わるからだ。たとえばパソコンの容量を表すバイトも、キロ (K)、メガ (M)、ギガ (G)、テラ (T)と3桁ごとに単位が変わる。
金額も図1のように、Thousand (T), Million (M), Billion (B), Trillion (T)と3桁ごとに単位が変わる。アメリカ人にとってはカンマの切れ目が単位の変わり目になっているので、3桁ごとにカンマで区切ることによって非常に読みやすくなるのだ。
ところが、日本の金額は4桁ごとに万、億、兆と単位が変わる。それにもかかわらず、表記だけはアメリカ式にならって3桁ごとにカンマで区切るため、読みやすくならないのだ。むしろ、読みにくくなっていると言ってもいいかもしれない。
日本人が3桁で区切る表記に慣れるコツは、カンマの左隣の桁が何かを覚えておくことだ。
カンマの左側の桁は千、百万、十億、一兆だ。これをただひたすら覚えてもいいが、論理的(?)な説明をちょっとしてみよう。
日本の単位は4桁ごとに変わるのに対してカンマは3桁ごとに打つため、そこに1桁のズレが生じる。その結果、図2のようにカンマの左隣は千→万→億→兆と単位が1つずつ上がっていく一方で、その頭に付く数は千→百→十→一と1つずつ下がっていくのである。
ついでに言うと、「兆」のときはカンマの切れ目と単位の変わり目が一致する。それは、カンマ以下の桁数12が3と4の公倍数だからだ。