キャッシュの時間価値

キャッシュには、預金や株式投資など、必ず投資機会があるので、キャッシュは時間の経過だけで新たな価値を生み出す。これをキャッシュの時間価値という。

たとえば、金利(複利)が10%の(夢のような)銀行があるとする。その場合、現在の100円は1年後、2年後には以下の金額になる。

\begin{eqnarray}
\left.
\begin{array}{l}
\mathrm{1年後}:100\mathrm{円} \times 1.1 = 110\mathrm{円} \\
\mathrm{2年後}:100\mathrm{円} \times 1.1^{2} = 121\mathrm{円}
\end{array}
\right\}
\tag{1}
\end{eqnarray}

これが時間の経過だけで新たな価値が生まれるということである。

逆に考えれば、1年後や2年後にもらえる100円は、現在の価値に換算したら100円の価値はない。1年後、2年後にもらえる100円の現在の価値(これを「現在価値」という)は、以下のように式(1)と逆の計算をすればよい。

\begin{eqnarray}
\left.
\begin{array}{l}
\mathrm{1年後の100円の現在価値}:100\mathrm{円} \div 1.1 \fallingdotseq 91\mathrm{円} \\
\mathrm{2年後の100円の現在価値}:100\mathrm{円} \div 1.1^{2} \fallingdotseq 83\mathrm{円}
\end{array}
\right\}
\tag{2}
\end{eqnarray}

つまり、1年後、2年後の100円は現在の価値に換算したら、それぞれ91円、83円の価値しかないということだ。これは、現在91円を持っていれば1年後には100円にでき、83円持っていれば2年後に100円にできるということである。

現在価値を求めるには式(2)のように割り算をするので、「割り引く」という表現が使われる。また、式(2)で用いた10%(その実態は期待利回り)を「割引率(discount rate)」という。

100円から目減りしている分は、現在100円を持っていたら得られるはずの利回りなので、機会損失に相当する。