原価企画

機械化・コンピュータ化が高度に進んだ工場においては、製造費用のほとんどはほぼ計画通りになる。企業によっては、直接原価の90%以上が製造段階より前の企画・設計段階で決まると言われている。

こうなると、製造段階でいくら原価を管理しようとしても手遅れだ。原価を管理するためには、設計や場合によっては製品企画のような上流工程に遡って管理する必要がある。

そこで生まれた方法が原価企画という方法だ。これは、製品の企画・設計段階で、製品の価値を損ねないように注意しながら、使う材料や部品を吟味し、生産計画や生産方式を検討することによって、目標原価に近づける方法だ。

原価企画は、トヨタ自動車が最初にやり始めたと言われている。

基本となる考え方は“引き算の発想”である。

以下のように、かかった原価に所定の利益を上乗せして売価を決めるというのは“足し算の発想”だ。

かかった原価+欲しい利益=売価

これでは価格競争力が出ない。

売価は市場が決めるのである。原価がどれだけかかったかは関係ない。その製品の価値に対して、顧客がいくら出してもいいと思うかによって、売価は決まるのである。

市場によって決まった売価に対して、所定の利益を引くことによって、許容される原価が以下のように決まるのである。

市場が決めた売価-欲しい利益=許容される原価

これが“引き算の発想”である。このようにして決まった原価を達成すべく、コスト発生の源流に遡って「コストを作り込む」のが原価企画である。 原価企画は英語ではtarget costingと言う。正に、「狙って原価を作り込む」という感じだ。