複数の原価計算対象に共通に発生する間接費を、個々の原価計算対象に何らかの基準に基づき分配する手続きを配賦という。分配の基準を配賦基準という。
製品の原価計算や部門別損益計算書などには配賦が付きものだ。たとえば、部門別損益計算書においては、本社費を人数比などを配賦基準として配賦するケースが多く見られる。ABCも配賦の一方法だ。ABCは、間接費ごとに配賦基準を選択しているという点で、「細かい配賦」といえる。
ところで、配賦は何のためにやるのだろうか。最も根源的な理由は、共通に発生する間接費の回収分担額を明示するためだ。
たとえば本社費は、売上が発生しない本社が自ら回収することはできない。そのため、売上が立つ他の部門に回収してもらわなければならない。その回収分担額の割り当てが配賦額なのである。
このような配賦の本質を踏まえれば、政策的な配賦というのもあっていいはずだ。たとえば、立ち上げたばかりの戦略的部門があり、事業計画上、当面は利益が出ないことが分かっているとする。そのような部門に対して、人数比で本社費を配賦したら赤字の上塗りになるだけだ。
せっかくの戦略的部門なのに、最初から重たい費用を背負わされたら思い切ったことはできない。大赤字部門というレッテルを貼られたその部門は、最悪、潰されるかもしれない。
そのような事態を避けるために、そのような新規部門には配賦をしない。その代わり、利益を出すことが予定されている部門には配賦をする。これが政策的な配賦だ。恣意的であり不公平だと言われればその通りだが、配賦の本質からすればよほど合理的ではないだろうか。
新規部門は生まれたばかりの子供だ。今後の成長率は誰よりも高いが、現時点での経済力はゼロだ。人数比などで機械的に配賦するというのは、そんな子供に向かって、「家族の一員である以上、お前も生活費を入れろ」と言っているのと同じだ。
配賦方法は、その本質をよく理解した上で考えることが重要ということだ。計算技術を駆使した複雑な配賦方法が必ずしも優れているわけではない。