機会費用

機会費用とは、「他の選択肢から得られたであろう利益」である。「機会損失」や「機会コスト」ともいう。「利益が費用」というちょっと変わった定義の費用だ。

たとえば、新製品の生産を抑え気味にしたところ、予想以上に売れてしまい欠品が相次いでしまったような場合を考えてみよう。このケースでは、「もっとたくさん作る」という選択をしていたならば得られたはずの利益を取りっぱぐれている。

この取りっぱぐれた利益が機会費用だ。「取りっぱぐれたのだから費用」ということである。

「取りっぱぐれた利益」をそのまま言葉にした「逸失利益」という言葉もある。これは、どちらかというと法務系で使われる言葉だ。経済や会計の分野では、それを反対側から見て機会費用と言う方が普通である。

機会費用は、「もし、こうなっていれば」という仮定に基づく費用であり、現金の支出を伴わない。財務会計ではそのようなものが費用になることはない。しかし、意思決定においてはこれを費用と認識しなければ、正しい意思決定ができない。

喫茶店の例を考えてみよう。この喫茶店の平均客単価は300円とする。

お昼の混雑時に、この喫茶店にお客さんがやって来た。奥に空いている席があるが、お客さんは混んでいると思って帰ってしまった。このとき、「何も起こらなかった」と考えたら、ただ単に暇な状態と区別ができない。この場合は、「せっかくお客さんが来たんだから、300円の売上は得られたはずだ。お客さんをちゃんと案内しなかったために、それを取りっぱぐれた」と考えるべきなのだ。

逆に言えば、そう考えられるかどうかで、ビジネスの成功と失敗は変わってくるのである。