KPIとは、Key Perfomance Indicatorのことである。直訳すれば、「主要業績指標」となる。業績評価指標と同義で使われることが多いが、Key(=主要)という言葉が付いているところがミソである。これは、数ある指標の中から選んだ主要なものということだ。業績評価指標には、ROE、ROA、売上高、営業利益、売上高営業利益率・・・と、候補はいくらでもあり得る。そのなかで、「これ」と厳選した少数の指標がKPIなのである。
多くの中から厳選するところにポイントがある。なぜならば、あれやこれやと言われても、人は同時に多数のことに気を配ることができないからだ。多くのことを気にし過ぎて、身動きできなくなるかもしれない。そうなったら本末転倒だ。
たとえば、ゴルフのラウンド前に、インストラクターから、「グリップはこう、スタンスはこう、上体の姿勢はこう、テイクバックはこうで、フォロースルーはこう・・・」と言われたら、一体何に気を付けたらいいのか分からなくなってしまう。言われたことすべてを直そうとしたら、いろいろなことが気になってぎこちないスイングになってしまうだろう。それではうまく動けなくなって、ゴルフどころではなくなってしまう。
こういうときは、「とりあえず、ここを直してみようか」と1つだけアドバイスするのが教え上手というものだ。選んだその1つのアドバイスで、問題の70%程度を解決できるようなポイントを見いだせるかどうかが、指導する側の腕の見せ所だ。
これが、KPIなのである。
上に立つ者は、目についた問題点を片っ端からあげつらえばいいというものではないのだ。目的は「人を正しい方向に動かす」ことである。方向を大きく外さない範囲で、人に伸び伸びと気持ちよく動いてもらうためにも、指標は厳選することが重要なのである。
重要なポイントは状況によって変わり得る。したがって、KPIも状況によって変わり得るし、変えるべきでもある。